ぼやき

主にセルティックスについて徒然なるままに日暮らしスマホに向かいて心に移りゆくよしなし事そこはかとなく書きつくるブログです。

沖ノ鳥島は島か岩か

どうも、お久しぶりです。

右の人からも左の人からもぶっ叩かれそうなタイトルですね。アハハ

 

さて、なんでこんな話題を急にするかと言いますと、先日私の大学のとある授業のテストでなんな問題が出題されました。

 

沖ノ鳥島が島であるか否か、国連海洋法条約の島の定義を踏まえながら、あなたの意見を論じてください。」

 

僕はここで困ったわけです。まあ色々ややこしい問題がここには介在しているわけですが、ひとつずつ見ていきましょう。

 

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上の写真が一般に沖ノ鳥島を指しています。

正確には、この写真の中央にあるテトラポッドに囲まれた丸いコンクリートの中にある小さな小さなやつが沖ノ鳥島です。(ここで「やつ」と表記したのは現時点では島とも岩とも言及しないためなので深い意味はないです。)

 

沖ノ鳥島についてとりあえず知っておくべきことをざっとまとめます。

 

沖ノ鳥島は東京都小笠原村に属していて、面積は7.86平方メートル、海抜は現在では約1メートルとされています(2008,参議院)。満潮時も約16センチが海上に現れるので、沈むことはないです。東小島と北小島があります。

 

沖ノ鳥島の歴史は古く一説によると、1543年にスペイン船に発見されたと言われています。1931年には正式に日本の領土となり、1936年からは気象観測所と灯台の建設工事が始まりました(太平洋戦争勃発で中断)。戦後は一時的にアメリカの信託統治下になるものの、1968年には小笠原諸島とともに日本に返還されています。

 

国は1987年頃から護岸工事を開始し、二つの小島はコンクリートで覆われることになりました。

しかし、この海域は気象・海象条件が厳しく、現地調査時には東小島近傍で約200kgのコンクリート塊が発見され、風雨によりコンクリート破片が発生し、小島を破損する恐れがあることから、チタン製ワイヤーメッシュの防護工を設けるなどの保全対策を実施されることになりました。

 

1994年には国連海洋法条約が発効され、ここで新たに排他的経済水域という言葉が初めて明記されました。

排他的経済水域については、おそらくご存知のように、領海の基線からその外側200海里(約370km)の線までの海域並びにその海底及びその下です。ここには領海は含まれていません。領海についてはまた違った管轄権があるのですが、それは今回関係ない話なので割愛します。

なお、排他的経済水域においては、沿岸国に以下の権利、管轄権等が認められています。

1.天然資源の探査、開発、保存及び管理等のための主権的権利
2.人工島、施設及び構築物の設置及び利用に関する管轄権
3.海洋の科学的調査に関する管轄権
4.海洋環境の保護及び保全に関する管轄権

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簡単にまとめると排他的経済水域内での経済活動は沿岸国が優先的に権利を与えられてるよ、ってことです。

この200海里というのはあくまで原則であり、対岸に他の国があるから中間地点までとか、とある条件を満たしたら延長できるとか、色々あるんですけどこれも割愛で。

 

1996年には沖ノ鳥島の周辺海域が排他的経済水域として認められました。

1999年には海岸法が改正され、国による直轄保全区域として指定、全額国費による直轄管理が開始しました。

 

じゃあなんで国はここまでして沖ノ鳥島を守ろうとしているのでしょうか?

一つは、沖ノ鳥島は、日本の国土全体の面積を上回る約40万平方キロメートルもの排他的経済水域をもつきわめて重要な島であるということ。この周辺の海域は漁業資源が大変豊富で漁場として手放したくないのです。実際、小笠原島漁業協同組合による漁業操業の実績や都の調査指導船「みやこ」の調査結果から、周辺海域には、ビンナガ、クロカジキ、キハダ、メカジキなど、様々な魚がいることが分かってきたそうで、また、コバルトやマンガンなど貴重な海洋鉱物があると考えられています。

さらに、周辺の表面海水の温度が年間を通して28度程度あり、深層の冷海水との温度差で発電する「海洋温度差発電」の適地と考えられています。これはあんまり現実的な話じゃないと思うんですけどね。

 

とりあえずここで抑えてもらいたいのは、日本にとってこの海域はとても大事だ、ということです。

 

 

 

 

 

ある程度予備知識の整理が終わったところで、再び問題を見てみましょう。

 

沖ノ鳥島が島であるか否か、国連海洋法条約の島の定義を踏まえながら、あなたの意見を論じてください。」

 

まずこの問題を解答する上で、国連海洋法条約の島の定義が重要になってきますよね。そこで実際に国連海洋法条約を見てみましょう。

 

国連海洋法条約第121条では、島について、次のように定義されています。

 

1. 島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、満潮時においても水面上にあるものをいう。

 

ほーーん。いけそうじゃないですか?沖ノ鳥島は島じゃないですか?なんだこの問題めっちゃ簡単やん。

 

ところが、それで終わりではないのです。大事なのがこの次。

 

3. 人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。

 

なるほど…

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まあでも狭いけど住めそう…

 

じゃないんです。一個目でなんて言いました?「島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、満潮時においても水面上にあるもの」でなくてはいけないのです。つまり、人工的に囲った周りのテトラポッドやコンクリートは島ではない、ということになります。じゃあこの条件を満たす島の部分でどれぐらいの大きさなの?というところですが…

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これです。

この上で「人間の居住又は独自の経済的生活を維持する」、つまり、ここで寝てご飯食べて…ちょっとできないですね。いやできたらそれでいいんですけど、波で浸食しないように護岸してるようなものの上に家なんて建てられる?無理だね…

 

ということで国連海洋法条約の島の定義を鑑みると、沖ノ鳥島が島であるというのは少し雲行きが怪しくなってきました…

 

日本の立場としてはどうしても手放したくない海域ですが、海外(主に中国)からは「いや岩やんけww」と言われまくっております。ピンチ。

 

 

と、ここまで私の意見ゼロで進めて参りましたが、私の元に届いた皆様の声を吟味していこうと思います。僕のコメントは非難してるわけではなく客観的にこうだろ、ってことをつらつらと述べてるだけなので悪く思わないでくださいね。あとめっちゃ上から目線になりますがそれも見逃したください()

 

「岩!見た目!」

まあその通りですわ。見た目は岩。でも岩と島の違いは?ちゃんと分かった上での発言でしょうか?見た目で判断する方は大抵はそうではありません。気軽に答えて、というふうに言ったので当然っちゃ当然の答えなんですけどね。とはいえ、これは沖ノ鳥島の問題について世間の認識が甘いことを示唆している結果と言えるでしょう。貴重な声でした。

 

「鳥だろ」

どこにでもこういう人がいるという良い例です。

 

「島!ギリ家が建ちそうだから。」

良い着眼点です。が、家が建ちそう、というのはどの部分にでしょうか?島本体に?コンクリートに?それによって大きく答えが変わってくるコメントです。島本体に家が建ばその主張で正解です。そうじゃないなら考える余地があります。

 

「土地」

島か岩かどっちだと思っての発言かは定かではありませんが、土地だということは領土だということ。たしかに現状ここは土地です。が、この問題とは少し関係のない議論かもしれません。というのも、後で述べるのですが、岩であっても領土とは認められます。排他的経済水域が島でなくてはいけないだけです。

 

「水没しないために手を加えすぎちゃってるんで、もはや島ではなく岩と思います」

手を加えたかどうかで島の定義が揺らぐことはありません。自然に生成された部分のみで判断されます。まあでも精神論的にはそう思っちゃってもしょうがないですよね。

 

ちなみに僕は「沖ノ鳥島は日本固有の領土だとかそういうのはいらない」って言いましたが、ここまで読んだ人なら分かりますよね。論点はそこじゃないんです。別にどこの国からもうちの領土だ、なんて言われてないんです。だから、こういうことを言ってる人がもしいたら「あー、わかってないんだなー」って思ってあげてください。

 

 

 

 

さあここで日本はどうしましょうか?

 

法学をちょっと触れたことのある人ならご存知だと思いますが、こういうのは大体過去の判例とか事例とかを参考に同じような判断がなされます。

ということで、似た事例を見てみましょう。

 

 

 

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上の写真はロッコール島です。正確にはでした。

 

このロッコール島がどこにあるかと言いますと…

 

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ここです。

 

大西洋に浮かんでいる島(?)です。

ロッコール島は、アイルランドから270マイル(430キロ)。スコットランド世界遺産セント・キルダ群島の西187マイル(300キロ)にある。海面からの高さが20メートルの休火山の先端だ。」

だそうです。沖ノ鳥島よりは随分と大きいですね。

この島は何で揉めたかと言いますと、こちらをご覧いただければ分かります。

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イギリス、アイルランドデンマーク排他的経済水域と重なっていて、アイスランドとも近い距離にあります。よってこの4国が俺のもんじゃいと主張し始めたわけです。ここで、前提としてこの4国はこれは島だから排他的経済水域が認められる!ってな主張をしてたわけです。このさらっと流す前提がめちゃくちゃ大事で、領土問題が関わってくると少しでも自国が優先的に取れる資源が欲しくてこうなります。

 

ところがどっこい、90年代になるとこの問題は何事もなかったかのように消え去り、さらにはロッコール島は岩だー、ってことになっちゃいました。

 

世間的には、

「1982年に採択、1994年に発効した「海洋法に関する国際連合条約国連海洋法条約)」には、121条3項に「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」と規定されており、イギリスは、ロッコール島は条約第121条3項に基づき漁業水域の限界のための有効な基点ではないと判断して政策転換を図り、ロッコール島の排他的経済水域と大陸棚に関する主張を放棄した」

みたいなことを書いてる人(誰とは言わないけど)もいて、まあ確かにこんなところ住めないわな、ってなるんですけど、裏にはまた違った話があります。それがEUの存在です。EUは加盟国の排他的経済水域については加盟国同士であれば公海と同じように加盟国の共通の財産だ、って方針を取りました。海が狭い原加盟国のフランスドイツあたりがウマウマな制度ですね。

こうと決まればこれはうちの領土だー、なんで主張しなくてもここの資源は取れるようになるわけです。さらに別に岩でも他に争う相手いないしいいんじゃね?となって、そもそも島と主張すること自体を放棄しました。

実は、岩も領土としては認められるので、この後ちゃっかりイギリスさんが俺もらうねー、って言ってもらっていきました。

 

ただイギリスくんがEU抜けちゃいましたけどこれからどうするんですかね?それはちょっと分かりません。

 

で、当然こうなると自分たちだけでロッコール島周辺の海域の資源を手にしたい、って考えの人も出てきます。

ウェーブランド事件というのですが、1997年に環境保護団体「グリーンピース」が、油田開発に対する抗議活動の一環としてロッコール島に小屋を建て、占領しました。

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分かります?小屋です。黄色いのです。カプセルみたいな家です。でも住めるからここは島だーって主張できます。そして彼らはロッコール島をグローバル・ステート・オブ・ウェーブランドと名づけて独立国家の樹立を宣言しました。またイギリス政府は当然無視するんですが。

でも彼らの少々過激とはいえ、住めるから島だ!って言えるような態度は、本気でこの岩を島にしたいなら必ず必要なものです。

 

余談ですが、おもしろいことに誰でもこの国の国民になれます。まあ交代制でここに住まないといけないんですけどね()

 

さあ日本の話に立ち返って考えてみましょう。

沖ノ鳥島は島ですか?岩ですか?

あえてここでは僕の意見は言及しませんが、島であると主張したい気持ちは痛いほど分かりますし、そのために活動してる人がいることも理解しています。

 

遠くに離れた島か岩かもわからない沖ノ鳥島ですが、これからの日本をもしかすると担っていくかもしれない海域だけに、今一度この問題についてじっくりと考えてみてください。

 

 

 

久しぶりの投稿でこんな内容でしたが、いかがでしたでしょうか。

 

これを読んだ上での感想とか意見とかあったらコメントしてくださいね。

それでは!